もう7年程も前の事になるが、IT系の雑誌で”Lindows”というOSの特集が組まれていた事があった。これは、どういったものかと言うと…まあ、名前から大体想像はつくと思うが、WindowsライクなLinuxであり、発売元はオン・ザ・エッヂ。その雑誌では、その会社の社長が商品について語っていた。もっとも、商品そのものは、大して魅力的とは思えない。と言うのも、起動時間から見て、それ程に高速なプログラムとは思えなかったし、インターフェイスがGUIのLinuxというのも、当時からかなり出回っており、特に真新しさは感じられない。また、アプリケーションを探してダウンロードする手順が容易であるという特典もあったと思うが、そもそもLinuxのディストリビューションには必要十分なソフトが付いて来るし、目ぼしいソフトをインターネット上に探し出すのは容易だから、やはり顧客へのインパクトは弱い。恐らくは、OS市場の一角を切崩すどころか、乗り上げる事すらも出来ないままに終わったのではないかと思う。それから2年程が経ち、社名こそ変わっていたものの、近鉄球団の買収騒動に名乗りを挙げた会社の社長の顔を見た瞬間、私はすぐにピンと来た。ああ、あの雑誌で語っていた人物だな…と。言うまでもなく、その人物とは、ライブドア元社長の堀江貴文である。
そのライブドアが、粉飾決算の廉で東京地検特捜部の取調べを受けた際、良識ある者の中からは、”特定企業叩きだ”という声が挙がった。それに対し、どこぞやの大学教授(確か、慶応だったと思うが)は、「特定企業叩きではない事をはっきりさせる為に、証拠を徹底的に洗い出す必要がある」と某番組で発言していた。私は、唖然とした。事実関係がはっきりした所で、特定企業叩きではない…などとは言えない。例えば、警察が特定個人が運転する車両を四六時中つけ回し、交通違反がある度に切符を切ったとして、それを特定個人叩きとは呼べないのだろうか?その真実性が担保されていれば、公正であるという事が、果たして言えるだろうか?答えは明白だろう。こういった錯誤は、物事の本質を鋭く見抜くだけの知性に欠けているからこそ生じる。日本の…特に文系の学者の知的レベルが低いというのは前々から知っていたが、これはあまりにもお粗末である。
堀江の問題を考える際、いつも思い浮かぶ人物がいる。元陸上100m走世界記録保持者のベン・ジョンソンである。陸上競技…殊にトップアスリート達の間では、筋力増強剤は比較的よく利用されている。これは見方を変えれば、筋力増強剤を使用しない事は、ハンディを背負わされるのと同じ事であり、この事実そのものが、筋力増強剤の不正使用を後押ししているという側面がある。これについて、特定個人を集中してマークしたらどうなるだろう?マークされた人間は、筋力増強剤を使用せず、ハンディを背負ったまま競技に臨むか、薬物検査で引っかかるかのどちらかしか、選択肢がなくなる。選手の安全と公正さを確保する為のルールであっても、それが例外無く、偏り無く適用されなければ、特定個人を攻撃する忌まわしき武器となってしまうのである。あるTV番組で、ベン・ジョンソンは語っていた。「私は、自分の持っていた世界記録をもう一度認定してくれだとか、メダルを返してくれなどと言うつもりはありません。ただ、私が言いたいのは、不正が摘発されるならば、例外なく摘発されるべきだという事です」…堀江の問題も、同じ事ではなかろうかと思う。
もう一つ、堀江について思う事がある。彼は大学時代、夏休みを利用し、北海道の酪農農家の仕事をしていた事がある。その時の雇い主は、対価はともかく、人の役に立てればそれで良いといった感じの青年といった印象を堀江に対して抱いており、後の堀江の金銭崇拝的な発言は、当時の堀江からは考えられない事だと言う。
この変化に対し、ごくごく単純な解釈を与えるならば、金の魔力が堀江を変えた…といった所であろうか。しかし、私の解釈は違う。彼は若くして成功を収めた。ところが、日本人はやっかみが強いから、その収めた成功の大きさの自乗に比例するくらいの、理不尽な誹謗や中傷を受けて来たであろう事は、想像に難くない。彼は頭の良い男であるから、金持ちでなければ出来ない発言が嫉妬深い輩の心を掻き乱すに十分な威力を持っているといった程度の認識は、当然に持ち合わせてた筈である。然るに、彼の金銭崇拝的な発言は、そういった者達に対する報復なのではないか?私には、そう思えるのである。
こういった感覚は、通常人にはなかなか理解できないのだろうか?ただ、私にはよく分かる。と言うのも、”管理人の紹介”にもある通り、私は際立って高い知能を有しているが、それがための妬み・やっかみから来る誹謗や中傷を、今日に至るまで受け続けている(※)。私はこれを、有名税ならぬ高知能税と考え、出来るだけ甘んじてやる様にはしているが、しかし、こういった理不尽な攻撃に対し、多少意地の悪い考えが浮かぶというのは、ごくごく自然な事であろう。
一つだけ、断っておく。ゲーテは、”倫理の大半は、悪意と嫉妬から出来ている”と言ったが、”金銭崇拝は悪”といった思想は、まさしくその典型である。私は別に、金銭崇拝が悪いと言っている訳ではないし、またそんな偏見が正しいと頭から思い込める程に単純でもない。ただ、堀江のそれは単なるパフォーマンスに過ぎないという事実を指摘しているだけである。ついでに言えば、その堀江に対する嫉妬から誹謗や中傷を繰り返している者達の方が遥かに、本質的には金銭崇拝に近いのではないかと思う。
※:意外に思われるかも知れないが、この種の攻撃的な行動に最も走りやすいのは、中途半端に知能の高い者である。知能では勝てないという事実が、自身のアイデンティティを薄れさせてしまうためと思われる。