詭弁

 2013年12月22日にテレビ朝日で放送された、「超常現象㊙Xファイル」という番組の一部を、ここに紹介する。何やら、正体不明の飛行物体が、本番中にテレビ朝日上空に出現したらしい。


 最後の方でUFO否定派と肯定派に分かれて行われている議論を書き出したのが、以下のものである。ご覧頂きたい。

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①韮沢:「今日出たUFOはね。あの、肉眼でずっと見えてたんですよ。で、私もそれを、じっと見てました。そして、まあ5分くらい、その、消えたり、出たり、こう…要するに、少し揺れるんですよ。その内、だんだんだんだん小さくなって来るんです。カメラは、それをずっと追える訳ですね。それから、結局、消えるまで約1時間、あの、少し揺れながら、大きくなったり小さくなったりしてる訳。だから、レンズのゴーストだとか、色収差だとかいう事はないんです」
②大槻:「だって、俺みてなんだもの。知らないよ、んなものは」
③韮沢、他数名:「見てない?(映像を指差す)じゃあこれ、見て下さいよ」
④大槻:「だから、だけどこれ、宇宙人がどこに乗ってるの?これ」
⑤山口:「我々は一言も、宇宙人が乗っているだとか、攻めて来てるなんて言ってませんよ。あの物体が何か、説明して下さいよ」
⑥大槻:「黙ってろ」
⑦韮沢:「こっちを見ないで、あっち(UFOの映像)を見て、見てよ。何でこっちを見てるんですか」
⑧大槻:「空を、夜でも昼でも、とにかくね。カメラを向けて、じ~っとね。望遠レンズや何かを向けて待ってるの。何ぼでもいろいろなものが映って来るよ」
⑨韮沢:「じゃあ、これは何ですかって」
⑩大槻:「こんなもの知らないって、俺見てないんだもの。とにかく、笑うだけ」
⑪山口:「何で笑うんですか。ニューヨークとかメキシコとか新宿とか◯◯(聞き取れず)とか、全部出てるんですよ。UFOフリートって言ってね、世界中でみんな見てるんだ。じゃあ、YouTubeで検索してみなよ。英語で”UFO FREET”だよ。世界中の人が、こういう物体見てるんだよ。それをね、学者のあんたら(大槻氏を指差す)がね、全部隠してるんだよ。大槻、説明しろよ」
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 この中で最も不可解なのは、山口氏の発言である。そもそも大槻氏は、地球上空に一見して不可解な物体…即ち、文字通りの未確認飛行物体が確認される事そのものを、否定している訳ではない(この事は、⑧からも明らかである)。ただ、それが宇宙人(地球外知的生命体)であるといった、飛躍した論理により導き出された可能性を否定しているのである。しかし、それを④の様に指摘すると、山口氏はそんな事を言っているのではないという(⑤)。では、山口氏の主張とは、一体何なのだろうか?一見して何だか分からない物体を、大槻氏はいきなり映像で見せられた。そして大槻氏は、それが何であるかを、その場で答える事ができなかった(画像解析等の、科学的に検証する機会が与えられていなのだから当然である)。その事実を以って、あなたは何を証明した気になっているのですか?…と聞かれて、山口氏はごまかす事なく、答える事が出来るのだろうか?
 以下、この議論が曖昧なものになってしまっている理由を解析する。まず、彼ら肯定派の本来の主張は、これが宇宙人によるものであるという事である(これは、誰の目から見ても明らかだろう)。ところが、彼らのこの主張は、厳正な批判に耐え得るものではない(例えば、大槻氏の④の批判が成立する)。だから、その点を指摘された際、その反論を逃れる為に、山口氏は自らの主張そのものをすり替えている。自分達の主張の弱い所を突かれた途端に、そんな事を言っているのではないと、本来の主張そのものの存在を否定してしまっているのである。結果、彼らの主張が、訳の分からないものになってしまっている。つまり、彼ら肯定派がやっている事は、単なる批判の回避…即ち、逃げでしかない。尚、⑪では山口氏がここぞとばかり、口角泡を飛ばし熱弁を振るっているが、この指摘は、空中に出現した一見して不可解な物体に対し、何の根拠もなく宇宙人であると結論する山口氏の様な人々が世界中にいる…という以上の何事をも証明していないという事実も、ここでは付け加えておこう。
 敢えて言うのも馬鹿馬鹿しいが、自身の主張の正しさは、それ自体が証明される事によってのみ示し得るものであり、自説への批判の回避や、対峙する者への批判は、その代償とはなり得ない。また、その場の勢いに任せるがままに息巻き、相手を声高に非難してみた所で、それは単に、自説が優勢であるかの如く見せかけただけの演出でしかない。更に言えば、彼ら肯定派の論法は、カルト信者のそれと根本的に同じである。自説への批判は、あやふやにしてごまかそうとする。一方で、対峙する者達に対しては、(自説の正しさを示す事ではなく)それらを貶める事により、相対的に優位に立とうとする。仲間同士で慣れ合い、勢いだけで押し切ろうとする。無論の事、これら忌むべき共通点は、自説が正しいと結論付けたいが、それを証明し得ないという、両者に共通した境遇がもたらしているものである。
 ちなみに、大槻氏は、何と反論すれば良かったのであろうか?勢いだけの空論を振り翳す人間が相手であるから、その事実を白日の下に晒してしまえるものが有効である。となると、

「あなた達の主張は何ですか?また、あの映像が証明する事実は何ですか?」

で良かったのではなかろうかと思う。

 肯定派の知的程度が余りにも低いため、議論自体は至って陳腐なものになってしまっているが(この辺り、大槻氏には同情する)、ありがちな詭弁の類型の一つである為、敢えてここに紹介した。今後も機会があれば、ここに紹介して行きたいと思う。