’16 アメリカ大統領選 – 追記①

 ’16のアメリカ大統領選は、大方の予想を覆し、トランプ勝利の形で幕を閉じた。今回、事前の世論調査とは異なる結末を迎えた主たる要因は、以下の2つと思われる。

① 消極的支持票(不支持票)の多さと、事前の世論調査

 今回の選挙は、候補者双方に魅力が乏しかった為、「より”マシ”な方を選ぶ」という性格が強かった。つまり、消極的支持票が多かった訳だが、消極的支持票を入れるモチベーションは、積極的支持票を入れる程には高くない。尚、今回の選挙の事前の世論調査では、クリントン優勢であった。従って、クリントンへの消極的支持票(即ち、トランプへの不支持票)を入れる筈の人々は安堵し、投票所に足を運ばない人が思いの他、多かった(積極的支持票であれば、こういった事は起こり難い)。結果、クリントン票は、事前の世論調査ほどには集まらなかった。

② 隠れトランプ支持者の多さ

 事前の世論調査と実際の投票結果の乖離で記憶に新しいのは、イギリスに於けるEU離脱の国民投票である。”移民の受け入れをしたくないから、EUを離脱する”では、排他的な印象を与えてしまうため、表立って表明する事は躊躇われる。だから、EU離脱賛成派の一部は、自分の意志を表明する事を極力控え、投票に臨もうとする。結果、実際の投票に於いては、事前の世論調査よりも、EU離脱派の割合が高くなる。
 おそらく、今回の大統領選挙に於いても、同じような状況が生じている。トランプを支持する事は、同時に彼の思想の根底にある、”白人至上主義”を表明するかの如き印象を受ける。これは、実力主義を地で行く…即ち、排他的なものの考え方を良しとしないアメリカに於いては、イギリス以上に好ましくないものと看做される。近年、アメリカでは移民の数が急増しており、相対的に白色人種の社会的影響力が下降傾向にあった。この状況に危惧を抱いているが、それを表立って表明する事が躊躇われる者(白色人種)の中には、事前に自らの意志を表明しなかった者も多く、結果、実際の選挙に於いては、事前の世論調査よりも、トランプ票が多くなった。
 尚、EU離脱に賛成したイギリス人の内、少なからぬ人々は、EU離脱に賛成した事を悔やんでいると言う。つまり、総合的な利益よりも、”移民を受け入れたくない”という感情を優先した事の愚かしさに、後になって気付いたのである。今、改めてEU離脱の国民投票を行ったならば、イギリスでは恐らく、反対票が多数を占めるだろう。この点では、おそらくアメリカは異なる。何故なら、トランプに票を入れた者たちの多くは、投票した後もクリントンの方がマシだったとは、考えていないからである。

 投票(選挙)とは、有権者の意志を反映させる為に行われるものであるから、これらの事態が生じる事が適正でないのは明らかである。つまり、これら一連の事態により、現行の投票のあり方の問題点が浮き彫りになった訳だが、では、これらの問題を解消する為には、一体どうすれば良いのだろうか?
 私ならば、次の様にする。まず、投票日を複数に分ける。そして、初回投票日に投票する100万人、二回投票日に投票する200万人、三回投票日に投票する400万人…といった具合に有権者を無作為に分け、投票させる。もし、この様にすれば、①のクリントン支持の人々は、後の方になるにつれ、怠けてなどいられない事に気付いた筈である。また、②についても、実際の情勢を目の当たりにすれば、それを現実の問題として捉え、慎重にならざるを得なくなっていたはずである。後に行くにつれ投票者数を増やすのは、選挙が進むにつれ、現実感が増す事により、より慎重な判断が期待できるからである。
 こういった、「段階的投票方式」とでも言うべき方法、及び、その有効性に、やがては多くの人々が気付くだろう。もっとも、それがいつになるかは、分からないが…。

 ちなみに…実を言うと、私はトランプは嫌いではないし、世間が考えている程に思慮や知識に欠けるとも、横暴だとも考えていない。ただ、今回はクリントンで決まりだと思っていたから、この珍事は私にとって、多少なりと嬉しいサプライズだった。今後は、彼の手腕に注目したい。